三和ゴッドに会いにゆく〜中国・深圳の人材市場と製造業大国の影〜

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三和ゴッド。その存在を僕が知ったのは5月のNHKのドキュメンタリー番組

実際に足を運んで、やはり思うことが多かった。
そのNHKの番組で見た情報や追加で調べたことを参考に、自分が見たり体験したことを踏まえつつ、まとめて見た。

三和ゴッドとは

中国・深圳郊外の就職斡旋場「三和人材市場」を中心に、中国の製造業大国の裏側で生み出された行き場のない若者たち。

故郷の親族とのつながりが断絶し、劣悪な環境の安宿やネットカフェに泊まり続けて自堕落な生活を送る彼らは、いつしか中国のネット上で「三和ゴッド」(三和大神)と呼ばれるようになった。文春オンラインより

「三和ゴッド」とは捉え方によっては差別用語と受け取ることもできるかもしれない。
その人たちに会いに行くというのは、これも賛否両論あるのかもしれないが、僕はこっそりとその現場を覗きに行くことにした。

中国のシリコンバレー?深圳(深セン)とは?


華強北駅付近で撮影。名古屋よりも近代的な建物が多い印象

香港の北側に面していて、僕は香港滞在のトランジットを利用して陸路で深セン入りをした。ハードウェアのシリコンバレーと呼ばれ、中国本土の4大都市「北上広深(北京・上海・広州・深圳)」である。実際に深圳の地下鉄などの交通網は非常に発展していて、不自由はなかった。

もともと深圳は1980年代に政府に経済特区に指定されてから、世界の工場として生産拠点として整備さてきた。製造部品の品揃えや質は世界最大規模で、ここからアジアやアフリカなど10億人近いローエンド市場にコピー商品が流れていったという。(参考文献)


僕が行った「华强電子世界」をエスカレーターの上から撮影

ハードウェアのシリコンバレーと言われるのは、経済特区指定以降の発展が背景にあり、部品が手に入りやすく生産拠点も豊富なので、新しいプロダクトを作るのにも適している。そして、この生産拠点を目指してやってくる若者が多いために、人材も豊富だ。

三和人材市場には素人でも行けるか!?

香港から行く場合も、香港都心部からMRTで約1時間で深センに入れる。
当然、違う国になるので入国審査が必要だった。


僕のパスポートはまだ5年用。両国ともにVISAや入国料は必要なし。

その後、深センでも地下鉄に乗るが、名古屋や大阪よりも路線が充実している印象であった。
さすが中国4大都市の1つであり、どの路線も人が多かった。

ここから「龙华站(龍華駅)」に向かう。


目的の駅まで片道・6元=約100円

地下鉄を降りると都会であった。
飲食店も充実しており、ショッピングモールも人通りも多い。

ここから10分ほど歩いた。


A出口から東側に道なりに歩き、川の1つ前の大通りを左折して北側に歩く

そして、着いたのがテレビで見たあの三和人材市場である。
その周辺にも似たような求人をする大きな建物が見受けられた。


写真の奥に人だかりがある。ここで職業紹介などが行われていた。

また、道中で何回かおばちゃん達から安宿の勧誘を受けた。
僕もすっかり、仕事を探しに来た一人の若者の気分だと思われているようだ。

実際に市場に潜入!そこでみたリアル

ここには、中国各地から仕事を求めて、多くの若者がやってくる。
そして、三和人材市場に集い、仕事を見つけていく。

毎日、ここで7000人が採用されているらしい。
求人、面接もここで行われる。


このように至る場所に求人広告があった。右下の看板に「包吃包住」の文字

右下の求人だと、16-50歳が対象だ。

「15元/小时」とあるので時給約240円だ。
月で4000-4200元もらえるとのことで、日本円で約64000円。

「包吃包住」は食費も住居も補助しますということだ。
現地で食べた焼きそばが12元(約200円)だったので、この給料で宿付き、飯付きならお金が貯まりそうだ。(レートは2018年8月10日現在)

しかし、NHKのドキュメンタリー番組では、ここの人材市場で提示された情報は正確ではないことも多いと言っていた。

包吃包住の部分も給料から天引きされていたり、聞いていた仕事と異なることもある。
また、残業をしないと稼ぎは良くなく、1日12時間労働が必要となるらしい。


本物かどうか定かではないが、日本の某社の求人も見受けられた。

特に中国の内陸部の農村出身者が出稼ぎにやってくる。
世界屈指の経済大国になったが、農村部では貧困に悩まされているそうだ。

若い労働力は都心部へ出稼ぎに出るので、農村には子供と祖父母しかいない。
その子供たちを留守児童と呼ぶが、彼らもまた出稼ぎで村を出て行く。

そして、ここに集まる若者は留守児童の出身が多い。
この連鎖は繰り返されるのだと思う。

職が溢れているとはいえ、条件の良い仕事は学歴や技術が必要だ。
ここに集まる若者の6割が中卒で、彼らは単純労働に就くことになる。

採用されたからだろうか、バンが迎えに来て、事務所で待っていた若者たちが乗り込んで行く姿が見られた。

ただ、彼らは三和ゴッドではない。

過酷な労働などに耐えきれず、三和ゴッドは工場労働からはじき出されてネットの世界に現実逃避するようになる人々だ。
出稼ぎに来たものの、1日働いて3日遊ぶという生活をする人々が三和人材市場の周りにたくさんいる。

本当に建物の周りに三和ゴッドだと思われる人々がいたが、心情的に写真を撮ることは僕にはできなかった。

田舎に帰っても職も、やることもない。しかし、ここで良い職に就くこともできない。
職にありつけても過酷な労働環境であったり、条件が悪い。時には騙されて賃金が受け取れないこともある。

また、彼らは農村戸籍であり、社会保険や医療も満足に受けれない。
こちらで結婚や子供を作っても、子供は田舎の祖父母に預けることになるらしい。子供も農村戸籍になるため、深センの公立小学校には入学できないからだ。

この国は共産主義国ではなかっただろうか?

人生を諦め、ネットゲームに明け暮れてその日暮らしになるのも分かる気がした。


人材市場では様々な職を売り込まれる。

僕もこの市場を歩いていると、何度もひつこく中国語で声をかけられた。
外国人だと言うわけにも行かず、一方で中国語も分からないので無視する形になってしまった。

中国語で言葉が強いと言うこともあると思うが、怒られている気分になった。
「見てないで早く決めなさい」「何が希望なの?言って見なさい?」などと言っていたのかなと推測する。

ちょうど僕と同世代の若者ばかりで、周りをキョロキョロとする姿は、上京して来たばかりの慣れない若者に見えたのだろう。

弟と同い年の少年との出会い

ある意味、観光で訪れている外国人である僕が、この場で誰かに声をかけるのは良くないのかもしれない。
ただ、帰るか迷っていたタイミングで雨が降って来て、雨宿りをすることになった。

その時に、近くにいた穏やかな雰囲気の少年に声をかけた。
全く英語は通じず、身振り手振りとスマホの地図や電卓でコミュニケーションを取った。

彼は1999年生まれで、僕の弟と同じ歳だった。
中国の内陸部・雲南省の昭通市から来たという。

彼はどんな想いを持ってここに来たのだろうか。
そして、ここでどんな職に巡り会い、どんな人生を歩むのか。

様々なことに想いを馳せながら、一緒に雨が降るのを見つめていた。
弟と同じ歳だっただけに、親近感が湧いた。

行ってみて思ったこと

ハードウェアのシリコンバレーこと輝かしい深センの裏側。
その裏には中国の抱える様々な問題によって生み出される悲劇の若者がおり、それを生み出す三和人材市場があった。

僕は「フェアトレード!!!」などと言って、東南アジアやアフリカに目を向けて活動をして来たこともある。
それを否定するわけではもちろんないが、遠いアフリカの人々だけではなく、身近な東アジアにも深刻な問題が存在する。
そしてそれを問題視する人はあまりにも少ないし、僕も知らなかった。

資本主義が続き、安い労働力を追い求める限り、似たようなことは繰り返されると思う。
(三和の場合は中国ならではの情勢がより、深刻にさせていた)

自分が途上国で何か事業を起こそうとする際に、ここでの経験が生きるかもしれない

NHKのドキュメンタリーはかなり深いところまで取材し、また撮影もしていたので、興味を持たれた方は機会があれば、ぜひそちらをみてほしい。

また、世界の社会問題に関して他にもブログを書いているので、興味があれば合わせてこちらも読んでいただけたらと思う。

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