【ヨルダンのリアル】中東の要だが石油が出ない?〜政治体制と財政危機とこれから〜

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日本からではあまり想像もつかないヨルダン。
中東の要と呼ばれ、独自の問題を抱えながらこの時代を生き抜いている。

ヨルダンの情勢に関して、このブログ記事は2018年時点でことをできるだけ詳細に書いた。
これの記事を読んだら、クラスで一番、ヨルダンに詳しいと名乗れるかもしれない。

ヨルダンのシリア難民などの事情に関してのブログはこちら
「ヨルダンのシリア難民の現実〜シリア国境近くのザアタリ難民キャンプへ〜」
こちらの方が読みやすくて勉強になるかも…

 

ヨルダンってどんな国?


ヨルダン最大の観光地「ペトラ遺跡」だが、入場料が約7000円と驚くほど高い。

人口は約1000万人、面積は北海道よりも大きいかなくらい。
中東に位置しており、イスラム教の国。

この国が興味深いのは、中東なのに石油が出ないこと。
石油どころか国土は砂漠地帯なので、一次産業(農業や畜産業)ができない。
また、海も南側のわずかな面積が面しているだけで、「準内陸国」と呼ばれている。

(厳密に言えば、「リン鉱石」の天然資源があり輸出しているが、やはり石油に比べると影響力は大きくない。また、天然ガスもあるが埋蔵量は多くなく、オイルシェールも見つかったが実用化はされていない。)

では、どんなことでお金を得ているのだろうか?
興味深い政治体制や、最近の動向とともに見ていこうと思う。

 

ヨルダンの政治体制が面白い!


歴史的建造物が街中にも多々あり、歴史の深さなどを感じさせる

立憲君主制の国で、国王が実質的なトップである。(国王は世襲制)
国王が首相や国務大臣を指名できちゃうので、国王の言いなり内閣が出来上がる。

また、上院と下院があるが、上院も指名制で下院のみ選挙。
しかし、下院はあまり力を持たないとされる。

つまり国民の投票権利はあるものの、実際の政治にはかなり反映されにくいシステムだ。
ちなみに明確な文章化はされていないが、首相や国務大臣は部族の比率などで不満が出ないよう調整されている。
(自民党の国務大臣も各派閥を調整して指名する感覚と近い?)

なるほど、変わった政治システムだなぁ…

 

ヨルダンの財政状況がやばい!?


アンマンのスターバックスのレシート。「16% add on tax」と記載がある

冒頭にも書いたが天然資源に乏しく一次産業ができない土地柄だ。
その中で、観光産業と国外への出稼ぎ労働などが大きな収入基盤でもある。

だが、やはり国の財政状況は良くはなく、僕も驚いたが、消費税は16%かかる。
これは、レストランやファーストフード店での食事や、ショッピングモールで購入したものに課税されているだけで、街の売店や市場では非適用。

この財政状況の改善のため、現在の国の方針としてはIMF(国際通貨基金)の支援を必要としている。
そのために様々な条件を整えることが必要で、そのうちの1つが所得税の増税だ。

それを実行に移そうとしたのが前首相であるが、所得税増税に反対する国民によってデモが発生し、国王によって20186月に前首相は交代させられた。
(詳しくはこちらのニュースを)

首相交代によって国民は落ち着き、一部改定の上で新首相がまた再度、議会に提出中である。今度は下院を通過したらしい。(詳しくはこちらのニュースを)
元々の首相を指名していたり政策の意思決定の大元は国王なのに、首相の交代で落ち着いてしまうのか…

僕にはちょっと不思議に思える。

 

世界各地からの支援金で成り立つ国?

資源的な意味での立地は恵まれなかった。
しかし、不幸にも幸運にも宗教的・政治的な意味で重要な立地となり、そのおかげで成り立つ国と言える。

北側には内戦やISで国内が混乱しているシリア。
西側には未だに対立をするイスラエルとパレスチナ。
南側にはサウジアラビア、北東にはイラクがある。
(サウジとイラクはイスラエルと仲良くない)

そういった周辺国の影響の緩衝材や難民の受け皿として、ヨルダンは中東の均衡を保つための要だと言えるのだ。
そのため、陸続きで他人事ではないEUも多額の支援をし、またアメリカも支援を強める。

所得税の増税のためにテロが起きた際、アラブの春の再来を恐れて、サウジやUAEなどの近隣国がヨルダンに25億ドルを寄付したほどだ。(詳しくはhttps://jp.wsj.com/articles/SB12390688177033003890604584279590574183758)

IMFからの支援が決まれば、国際機関からのお墨付きを得たことになる。
そうすると各国はヨルダンに対しての支援がよりしやすくなる。

 

実際のヨルダン人の生活は?


サンドイッチやタコスのような食べ物が多い(これで約600円)

物価は日本や隣国のイスラエルに比べたらやや安い程度。
むしろレストランなどでの外食や電化製品などは日本より高いかもしれない。

中東自体が安い印象はないが、総じて言えばやはり東南アジアや南アジアの国々と比べると物価は高い。

それにも関わらず、平均月収は7万円程度。(https://www.numbeo.com/cost-of-living/country_price_rankings?itemId=105&displayCurrency=USD)

副業はOKの文化であり、特にタクシードライバーは1つの車をシェアして、複数人で運営していることもあるらしい。
確かにその中で消費税や所得税がアップするのは大変だ。

 

これからのヨルダン


都心部以外のヨルダンはこのような風景が広がっている。農業はできない…

長期的な政策をする余裕がないのではないかという見方もある。
日本のようなインフラ投資をしてという政策は資金や体力に余裕があるからこそできる先進国の政策なのかもしれない。

まずは直近のIMFからの支援を獲得し、それに伴って関係各国からも支援を取り付ける。
また、観光に力を入れつつ、オイルシェールなどが輸出できるように耐えるのではないかと予測する。

本来は第一次産業や二次産業を育てたいが、土地柄、限界がある。
であればITで攻めたいが、それは隣のイスラエルが。

商業のハブはドバイが覇権を持っており、今から参入しても甘い汁は吸えない。
この状況の中で、今の政権(国王)がどの方向を目指すかの指針は今後のヨルダンによって非常に大きなものとなる。

 

吉野流!僕がヨルダンで政治をするなら


日本にも馴染みのあるブランドの入ったショッピングモールもある

素人の発想で僕がもしヨルダンで何かするならこうだ。

特区をアンマン郊外に作り、そこに二次産業で雇用促進が期待できる外資系企業を誘致する。
雇用対象はパレスチナ難民やヨルダンの貧困層、一部のシリア難民だ。
(ここで一部のシリア難民としたのは、シリアに関しては難民は母国に帰る可能性があるのでメインの対象にはしない。)

難民の労働力やパワーを国の原動力に変えたらどうだろうか。
部品の調達は唯一の港を開発して効率化する。

目標はハードウェアのシリコンバレーと呼ばれる中国の深センだ。
中東のシリコンバレーことイスラエルが隣国にあるので相性は悪くない。

中東の中では治安が安定しており、外交も上手な国である特徴も活かせる。

天然ガスやオイルシェールの輸出での外貨獲得は今の時代からは期待できないので、そのエネルギーは国内のこの工場に使って行けば良いと思う。実際、いろいろ考えたら甘くないとは思うが、そんなことを考えながらヨルダンでの滞在を過ごした。

まとめ

ヨルダンは中東の要!
1つ1つの国に歴史や現在の特徴があるので、話を聞いたり調べていて非常に興味深かった。

他の国もこのように分析をし、より様々な利害関係を理解した上で議論や活動をしていきたいと思う。
今までは中東にこのように関心を寄せることがなかったので、来て良かったと改めて思っている。

オマーンも訪問したが、こちらも興味深かったのでぜひ!!
「オマーンって一体どんな国?オイルマネーで成り立つ国? 〜国の収入の84%が石油〜」