ヨルダンのシリア難民の現実〜シリア国境近くのザアタリ難民キャンプへ〜

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「難民」って日本にいるとピンとこないし実感はない。
ニュースでよく聞くけれど、現実はどうなんだろう?

難民キャンプのあるヨルダンで、実際の状況や課題を探ってきた。
現地で実際に体験したことと、現地に住む方や活動をしている方からの情報を総合してブログを書いた。

そのため、ネット上で調べて分かることよりも一歩深いところや、違った視点で読んでいただけるかと思う。
問題は複雑だし、日本からでは難しいけれど少しでも力になれると良いなぁ

ヨルダンの難民の状況


(アンマンからシリア方面に続く道。このまま進めばシリアに着くと思われる)

今のヨルダンの国民の半数は、難民として流入してきた人々だ。
中東戦争の際に、イスラエルに占有されたパレスチナから難民として逃れてきた。

また、スーダンやソマリアからの難民もいる。
地理的にも非常に多くの難民を受け入れている国だ。

今、注目されているのは、ISや内戦の影響で発生しているシリア難民で、ヨルダン国内に64万人いると言われている。今回は、そのシリア難民にフォーカスして現状を紹介したいと思う。

(なぜシリア難民が発生しているかといえば、シリア内戦があるからである。ISの問題や宗教対立、アメリカとロシアの代理戦争の要素も絡んで複雑である。興味がある人はこちらhttps://world-note.com/syrian-civil-war/)

 

難民キャンプの入り口まで潜入


ザアタリ難民キャンプの入り口。国境のように荷物検査、身分証明証の検査がある。僕は止められては入れなかった。

まず驚いたのは、ヨルダンの首都アンマンからシリアの首都ダマスカスまで車で3時間半ということ。
連日、ニュースを賑わせていてISの活動地域・シリアがこんなにも近くにあるなんて

車で1時間半ほどで、シリア国境まで20kmの距離にあるザアタリキャンプの入り口に着いた。
国境のような物々しい雰囲気があり、荷物の中身の確認やIDチェック等をしていた。

僕も入れるかもしれないなと思い、ダメ元で堂々とパスポートを見せる。
当然、ノーアポであり、交渉したが通ることはできなかった。

自由にシリア人が出入りできるわけではないらしく、勝手に街に出ないように規制をしているらしい。

入り口まで来たら中の様子が分かるかなと思って来たが、入り口からキャンプまでは500m以上あるだろうか。非常に遠くて分からなかった。

 

難民キャンプの人々の生活


この写真の奥に見える白いテントの集まりが難民キャンプである。かなり遠い。

この難民キャンプに住むと住居や電気代の支払いは必要なく、食料クーポンが配布されたりと最低限の生活はできるらしい。しかし、プレハブの建物であったりと住環境は良くない。

僕が入り口まで行ったザアタリキャンプは8万人が生活する。
僕の地元・日進市は人口9万人なので、比較すると実感するが、ここはもはやキャンプの規模感ではない。。

キャンプ内には市場があり、ウエディングドレス等の購入もできるようだ。
キャンプはザアタリ以外にもあるが、こういった難民キャンプに住んでいるのは、シリア難民全体の15%に過ぎないらしい。

じゃあ、残りの85%の難民はどうしているのか?
それは普通にヨルダン人と混じって、街で生活をしているとのこと。

 

街で生活するシリア難民


ヨルダンの首都・アンマンの市街地

家賃も光熱費も自分で負担することになるが、キャンプ外で自分で生計を立てる人々もいる。
しかし、VISAの関係で職業は限定されている。また難民増加に伴って家賃が上がったケースもあり、生活をするのは簡単ではない。

ヨルダン人との距離が近く、近所付き合いなどが大変でもある。
ローカルコミュニティに入り、そこでやりくりするのはストレスだ。

また政府が管理をすることができないため、NGOや行政のケアは行き届かない。

宗教も生活習慣も言語もほぼ同じであるため、その点での心配はなさそうだ。
また、僕にはシリア難民とヨルダン人の区別はつかなかった。

キャンプで生活するも、街で生活するも双方ともに大変だ。

 

難民とヨルダン人の貧困者


ヨルダン人の貧困者を対象に職業訓練・雇用促進をしている団体の援助で、現地の女性によって作られたポーチ。現地特有の刺繍でデザインされている。お土産でこれらを購入することが支援にも繋がる。

もちろん、ヨルダン国民にも貧困層がいる。
他国の難民ばかりの支援が多いと、国内の貧困層からの不満が出てしまう。

この地域では、シリア難民とヨルダン人貧困層の双方に不公平感が生じないように最大限の配慮を行いながらの支援が必要だ。

もちろん、ヨルダンにとっては自国民が第一であるので、難民の職種などを制限することで自国民を守っている。

ヨルダン人の貧困層の支援も一定以上の支援をするよう、難民支援系のNGOなどには呼びかけられているとのこと。難民キャンプの外出を管理しているのは、自国民を守るためでもある。

冒頭にも書いたが、「シリア人難民」以外にもソマリアやスーダンからの難民もおり、どの範囲でどう支援するかは悩ましい。

 

ヨルダンの外的側面から


中心部のゴーストタウン化も問題らしい。大通りに面した立地の良い建物の入り口がコンクリートで固められ、廃墟になっていたり、使われていない建物も多々あった。

なぜ、ヨルダンが難民をこうして多く受け入れているのか。
国際社会からの信用のためでもある。

また別の記事で紹介したいが、ヨルダンは中東でありながら石油が出ない。
国土の大半が砂漠地帯であるため、農業などの一次産業にも向かない。

そんなヨルダンは今は財政難であり、様々な国との外交や支援で成り立っている。
純粋に支援の意味もあるだろうが、難民の受け入れはその外交のカードの一部でもある。

難民に対する支援は国連等を始め、各国からの資金援助で成り立っている。
金銭面の負担はしてもらえるとはいえども、多くの難民を国内に受け入れ続けるのはリスクも体力も必要だ。

 

現在の状況と今後の見込み


中央にあるのは観光地のローマ劇場。ヨルダンの観光地は非常に魅力的であり、それもまた紹介できたらと思う。

ヨルダンとシリアの検問所が10月から再開し、シリアに復活の兆しがある。

ただし、シリア人はまだ自国には帰りたくない人が多いようだ。
シリアに帰国した人が、反政府系という名目で投獄されたケースもあるらしい。

そのため、多くのシリア人は自国に対する不安があり、また帰国をしても何もないので生活ができるかは分からない。

また、シリア難民に対する支援が始まって5年以上経過したことや、シリア情勢の風化、政治の安定かなどから、難民支援の予算が打ち切られているケースもあるそうだ。
次に支援を必要とされるのはシリア本国で、いかに帰って来た国民に住環境などを提供し、安全で健全な生活と経済を復活させるかである。

難民の多くの理想はヨーロッパなど第三国への移住らしいが、それも言語や文化面で課題は多い。

ISの活動も沈静化しつつあり、私たちの中でシリアや難民の問題は風化し、どんどん遠くなっていく。
しかし、まだまだ問題は山積であり、震災などにも共通するが、風化することが一番怖いと感じる。

最近のシリアに関しては、我々が思っているよりも回復しているらしい。
NHKが特集をしていたので参考に
https://www.nhk.or.jp/kokusaihoudou/archive/2018/09/0914.html

 

最後に


こちらはアブダリモール。近代的な建物もあり、中にはスタバやマクドナルド、ZARAなどがテナントを構える。iPhoneXも普通に買っている人もおり、発展している一面もある。

この記事を書くにあたって、現地在住の2名の日本人の方にお話を伺った。

また、NGOのスタッフからもお話を伺い、それらを総合して記事を書いた。

そのため、他のネット上にある日本語サイトには掲載のない情報も多いし、明確な情報の根拠や参考文献は提示できていない。ただ、現地に住む複数名の方々の情報を元を総合して書いているため、信ぴょう性は高いと考えている。